前回のメモリエリアについてはカードリッジ以外のメモリ(IWRAM, EWRAM, PAK ROM)にコードや変数を置く方法を説明をしました。ところが電源を入れたとき、すべてのデータはROM領域(カードリッジ)にあります。その時点からいったいどうやってIWRAMやEWRAMに配置されていくのか、その流れを見ていきましょう。先に答えを言っておきますとROM領域にアクセスされた時「C:\devkitPro\devkitARM\arm-none-eabi\lib\gba_crt0.ld」(github)がまず一番最初に実行されます。よかったら平行して読んでみてください。
実機のGBAにカードリッジを挿し電源をONにすると、そのカードリッジ内容はメモリの0x08000000からアクセスできるようになります。つまり.gbaファイルとは、その内容をファイル化しただけのものです。もちろんカードリッジはROM(リードオンリーメモリ)なので書き換え不可。あと大昔ということもあってデータは暗号化もされていませんでした。いい時代やったなあ・・・。
GBA上だと0x08000000~0x080000bf、.gbaファイル上だと0x00~0xbfまでの192(0xc0)サイズ分をヘッダと呼びます。内容は特に気にすることはないので素通りしましょう。一応次のような意味を持っています。
0x00 - 0x03 | 32 bit ARM B Jump to start of ROM executable |
0x04 - 0x9F | Nintendo Logo data |
0xA0 - 0xAB | Game Title |
0xAC - 0xAF | Game Code |
0xB0 - 0xB1 | Maker Code |
0xB2 - 0xB2 | 0x96 Fixed |
0xB3 - 0xB3 | Main Unit Code |
0xB4 - 0xB4 | Device Type |
0xB5 - 0xBB | Reserved Area |
0xBC - 0xBC | Mask ROM Version |
0xBD - 0xBD | Compliment Check |
0xBE - 0xBF | Reserved Area |
エミュレータで見るとこのようになります。(Tools -> Memory viewer)
main関数が実行されるまでの流れは以下のとおりです。
エミュレータで逆アセンブルするとこんな表示になります。
@--------------------------------------------------------------------------------- start_vector: @--------------------------------------------------------------------------------- mov r0, #0x4000000 @ REG_BASE str r0, [r0, #0x208] mov r0, #0x12 @ Switch to IRQ Mode msr cpsr, r0 ldr sp, =__sp_irq @ Set IRQ stack mov r0, #0x1f @ Switch to System Mode msr cpsr, r0 ldr sp, =__sp_usr @ Set user stack
自作ゲームを作って実機で動かそうとしたらタイトルロゴで止まる、でもエミュレータでは大丈夫という現象。こんなことがあったらチェックサムを疑ってください。devkitProにはgbafixと呼ばれるカードリッジチェックサムツールがあります。忘れずに実行して上げてください。
マルチブートとはカードリッジを使わずに通信ケーブルなどで起動する仕組みです。たとえば実機を2台持っていて、対戦ゲームをしたい場合を想像するとわかりやすいと思います。一方はマリオカートのカードリッジを装着していて、一方は通信ケーブルのみで繋がっている。この状態でホスト側からゲスト側にデータを転送して対戦をする、という仕組みです。これをマルチブートと呼びます。
devkitProではカードリッジなし状態を想定した制作も可能です。VBA-1.8.0-beta3ではファイル名で区別しており、xxx.gbaでしたらxxx.mb.gbaまたはxxx.mbとなります。インターネットでダウンロードしてきた自作ゲームがフリーズする場合、そもそもIWRAM, EWRAM領域にのみ展開されることを想定して作られているわけで、そりゃフリーズしますよね、というだけの話です。